久しぶりの歯医者に行った。五年ぶり位。
たまには検診にいこうかなと。その日は泊まりのバイト明けで、いろいろハプニング続きであまり寝てなかった。八王子で献血をして町田のブックオフを散策して時間調整をして幼少より行きなれてる歯科医に向かった。
その日は台風14号の影響でやたらめったら風が強い、自転車では前に進めなくて歩くなんて初めての体験だった。
ほうほうのていで到着すると今風の茶髪の女の子が受付兼助手をしていて、昼休み後なので患者は誰もいず、すぐに先生の前に通された。座っている椅子の目の前は一面ガラス張りで目の前には強風にあおられてる木と叩きつけられる雨が見える。
この先生は腕は確かで、ちょっと怖い感じの仕事にはしっかりしてるいい先生だ。
先生にブラッシングの指導を怒られながら30分ほどうける。
「こういう風にみがかなきゃ!」
「ふぁい。」
歯ブラシを口にくわえているとろくに返事もできない。

ブラッシングチェックのあと軽く歯全体を見ていく。

「うん?ちょっと怪しいね、レントゲン撮ります。」

「…あらなんだこりゃあ、こんなことってあるんだあ…」
と先生はレントゲンを見せてくれる。
「ちょっと色が怪しかった歯の隣が虫に食われてるねぇ。ぱっと見全然わからないのにねぇ。レントゲンは嘘つかないねぇ」と言いながらなんとなく機械をセッティングしていく。

あれ、今日削るのかしらなんて思っているうちに、「はい口開けてー。」
ウィーンと、独特の音。削られる歯。

っ!!あがが!
神経に触れた!
痛い!痛い!

先生は無言で麻酔を注射し、待たせている患者の元へ。

約20分程放置。強い風に打ちつけられる雨を見る。徐々に麻痺していく左上唇。ぺろんぺろん。
この感触久しぶり。表情が定まらない不安定感。

再び先生登場。採掘再開。骨を伝導して耳に響くあの音。
麻酔してるとはいえ、時折体を貫く痛み。
びくん!びくん!
声は出しにくいので体で表現するも。
「うわ〜、甘栗みたい」と言いながら掘り続ける先生。確かに虫歯は黄色く、なんとも言えない匂いで甘栗みたいだったけど…。

開いた穴はなにかでふさがれ、なにかを失って僕は歯科医を跡にした。失ったのは削られた歯だけだったのか、教えてよ、歯竹強
教えてよ、ウルフルズ